ドライブレコーダー - 買うべきか
近年、自動車の運転中(及び駐車中)の映像、音声を記録するドライブレコーダー(ドラレコ)の認知、普及が進んでいます。
その理由としては、技術向上や需要増によって導入コストが下がったことが一つ。もう一つは実際の利用状況の測定、調査や政策的・経済的効果の算出といった知見が蓄えられ、その投資に対するリターン(効果、利益)の認知が進んだためです。
映像記録型ドライブレコーダーの搭載効果に関する平成17年度調査について
本記事では、個人導入でのドラレコのコストとリターンについて考えてみます。
公的導入のコストとリターン
公的機関や業界団体での測定・調査・算出は、日本全体であったりタクシーや運送業といった単位でのものはそれなりに存在しています。
これらによると導入による効果は大きく、そのコストに十分に見合います。根拠については、後で簡単に触れていきます。
ただし、つけさえすれば良いというわけではなく全車装着や会社単位でのトレーニングが前提となります。
将来的には法整備によって全車への装着義務化する公算が大きいと思われます。
個人導入でのコストとリターン
全車義務化での全体での効果は大きいと書きました。もしそうなれば、本記事自体が無用となってしまいますが、まだまだ時間はかかりそうです。
そこで、全車装着義務化されていない状態を前提として、個人導入して割に合うかどうかを検討する必要があります。
導入におけるコストとリターンをまとめます。
- コスト
- 商品価格
- 導入費用
- 運用費用
- リターン
- 経済的効果
- 事故防止
- 賠償低減
- 盗難防止
- 燃費向上
- 非経済的効果
以下、詳細に見ていきます。
コスト
商品価格
Amazonを見てみると2千円から数万円くらいのレンジで商品が存在します。
ユピテル(YUPITERU) ミニタイプ常時録画ドライブレコーダー DRY-mini1X
- 出版社/メーカー: ユピテル(YUPITERU)
- 発売日: 2015/05/15
- メディア: Automotive
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価格.comによると、2万円以下の商品が売れ筋のようです。
ここでは、1万円と考えます。
導入費用
依頼すると工賃1万5千円ほどのようです。自分でやれば1時間以内にできる人もいるでしょう。時給換算で千円くらいでしょうか。
ここでは、間をとって8千円くらいと考えます。
運用費用
データを保存したり、運用費用も考えておくべきでしょう。
SDカードが主流でしょうか。Wi-Fi通信できる機種もあり、楽ですがちょっとお高めになります。
ここでは、事故の時だけ参照すれば良いと考え運用の手間0、すなわち運用費用0円とします。
リターン
経済的効果
事故防止
タクシー会社などの調査で事故防止の効果があることが報告されています。
ただし、ドラレコの映像を利用した危険予知トレーニングなどの教育が必要です。
ここでは、個人でわざわざやる人はいないでしょうから事故防止には役立たない、つまり事故防止の経済効果は0と考えます。
賠償低減
個人導入での最も期待される効果です。
事故において、相手の過失を証明できる可能性があります。ただし、証拠として確実に採用されるかどうかは分かりません。
また、ここでは任意保険に加入済みであることを前提とします。保険に加入していれば高額の賠償額は補償されますのでドラレコの効果は発生しません。そこで、少額10万円以下の場合にドラレコの効果が発生すると考えます。
平成26年データで、交通事故発生件数は全体で57万件です。
交通事故発生状況 :財団法人 交通事故総合分析センター ITARDA
そのうち、程度別に、
- 死亡 4千件
- 重傷 3万9千件
- 軽傷 53万
ここで、賠償低減の可能性のある事故件数を57万件の半分ほどと考えます。また自動車の運転者を5700万人と考えます。
すると5700万人のうち57万人が事故に遭い、さらにそのうちの57万人が事故にあい、さらに半分がドラレコでの低減効果の対象となります。つまり、1年のうちドラレコで賠償低減のケースに会う確率は、0.05%です。
重症以上の賠償額を1兆1400億とし、過失割合50%、裁判での証拠採用率を50%で考えます。
10万円 × 0.05 × 0.5 × 0.5 = 1,250円。
これをドラレコの耐用年数を7年、割引率を7%と考えて現在価値に直すと約7千円となります。
ドラレコの賠償低減効果は約7,100円との結果になりました。
盗難防止
2013年の車両盗難は619件で保険金支払い額は1件あたり170.9万円。同じく車上狙いで1092件で1件あたり32.6万円。
車両盗難と車上ねらいの2/3は保険適用と考えると364件で1件あたり10万円。単純に12ヶ月でかけると約120万円。これを57万人で考えると、
120万円 × 326 ÷ 57万 = 686円。
これも耐用年数を7年、割引率を7%と考えて現在価値に直すと約3,900円。
ドラレコの賠償低減効果は約3,900千円との結果になりました。
燃費向上
タクシーやトラックにおいては、ドラレコの装着により燃費向上するとの報告があります。
しかし、これも教育を前提としますので、個人導入においては効果0と考えます。
非経済的効果
例えば、ドライブ中の風景を録画して後で楽しむといった使い方が考えられます。
思い出はプライスレスですが、一応、金額に直します。0円とも考えられますし、1万円と言う人もいるかもしれません。
ここでは、千円の効果があるとします。
まとめ
結論
- コスト 18,000円
- 商品 10,000円
- 工賃 8,000円
- リターン 12,000円
- 賠償低減効果 7,100円
- 盗難防止効果 3,900円
- 非経済的効果 1,000円
差し引き、マイナス6,000円です。
この記事では、ドライブレコーダーの個人導入は「割に合わない」という結論になりました。
もちろん前提となる数字が少し変わると「割に合う」という結果にも成り得ます。(計算違いもあるかもしれませんし)
将来
現状では個人が合理的に考えるとドラレコの導入は割に合いません。実際、多くの人がつけていません。
しかし、例えば技術革新が進んで価格が安くなって装着の手間が0に近づけば割に合うことになります。現状でも全員が一斉につければ全体的な事故低減効果によって全体で得するのですから、すぐにでも義務化するというのも全体で考えれば合理的です。
技術革新が先か法制化が先か、どちらにしても将来は全車装着となりそうです。しかし、繰り返しになりますが現状で個人導入する合理性はなさそうです。