Pay or Not

払うべきか、払わざるべきか。割に合うか、どうか。判断に迷う事や物のコストとリターンを計算します。

夫婦別姓 - 強制すべきか

今回の記事は夫婦別姓についてです。

大変に政治的なトピックですが、このブログでは政治的な立場を明確にしたいとか政治的な主張をしようとは考えていません。ですので、ここではできるだけ客観的に述べたいと思います。誤りや過不足があればご指摘頂ければ幸いです。

いつものように夫婦の姓について、コストとリターンを考えてみます。コストとリターンは現状ベースで考えることにします。なお、当然ですがコストがかかること即ち悪ということではありません。コストとリターンの差し引きで考える必要があります。

夫婦同姓のコストとリターン

現状、

  • 夫婦同姓が強制されている
  • 通称での旧姓使用が一部では認めらている

という状況です。
現状ベースで考えますので、当然、コストもリターンもゼロです。

夫婦別姓のコストとリターン

夫婦別姓を強制するように制度変更した場合で考えます。

夫婦別姓のコスト

夫婦別姓の社会的コスト
システム変更コスト

現状の制度から大きく変わりますので、社会全体のシステムを大きく変更しなければなりません。
公的手続き、企業での人事関連、一般サービス、様々なシステムの変更が必要です。
マイナンバー導入の社会的コストは1兆円以上という見積もりもありますので、夫婦別姓の強制化においても同様のコストがかかっても不思議ではありません。

家族を認知するコスト

家族 = 同姓 という前提が覆るわけですから、同姓であることで家族であると認知できる状態から比べると、家族であると見分けにくくなることは間違いありませんのでコストとして数えます。
具体的にどのような時にどれくらい困るのかという例があまり思い浮かびませんし、これを社会全体での経済的価値に換算するのは大変に困難です。

家族の絆が弱まることでの社会的コスト

夫婦別姓のデメリットとされる代表的なものです。例えば、夫婦別姓により離婚が増えればその分の行政コストが増加します。

ところで、夫婦同姓であれば離婚しなかったというカップルが存在する一方で、夫婦別姓が制度化されたことで離婚しなくて済んだというカップルも存在するでしょう。
全体として家族の絆が弱まるのか強まるのかは判然としませんが、弱まる家族が一つもないとは言えませんのでコストとして数えます。ただし、経済的価値を算出することは困難です。

夫婦別姓の家族的コスト

社会全体で離婚が減ったとしても、自分の家族が離婚してしまえば、これは大きな損失に違いありません。
また、家の表札を2つ出さなければならない、といったコストも発生する可能性があります。

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夫婦別姓の個人的コスト

別姓を望む人にとっては、特にコストは発生しません。
一方、同姓を望む人、好きな人と一緒の姓になることに幸せを感じるという人が存在することも事実でしょう。そういう人にっっては、別姓を強制されることは人としての幸せを奪われることにつながります。

国家が個人の幸せを奪うことの是非はともかくとして、個人として大きなコストを負うケースがあることは確かです。

夫婦別姓のリターン

夫婦別姓の社会的リターン
手続き効率化

結婚により姓が変わる場合、その変更の手続きに行政、企業の人事(単純に名刺変更なども)コストがかかります。結婚で姓が変わることがなければ、これらのコストが削減できますので、リターンと考えられます。
マイナンバー導入においては、行政コスト削減が主なリターン(1兆円以上?)でしょうが、そこまではなさそうです。

システム変更リターン

システム変更に伴い、システム開発が必要になり開発業者の受注が増えます。潤った開発業者は雇用を増やすかもしれませんし、設備投資が増えるかもしれません。
要は一種の公共投資であり、GDPの増加につながりますが、乗数効果がどの程度なのかは判然としません。

性差別の減少

結婚により姓の変更をするのは圧倒的に女性が多いのが現状です。このことが女性差別の要因になっているのでしょうか。これが要因というよりは、結果であると解釈する方が自然だと思いますが、少なくとも別姓であれば平等にはなります。
夫婦別姓になれば差別が減るとは言い切れませんが、少なくとも増えることはなさそうです。
差別があった方が良いという考え方もあるかと思いますが、ここでは差別がない方が社会全体にとって良いことだという考え方をとります。

女性の社会進出

以前の記事で書いたように女性は労働市場で過小評価されている実態があります。 

payornot.hateblo.jp

 

もし正当な評価がなされるようになれば、収入が増えますので当然に女性の社会進出は進むでしょう。
また、女性が性別変更によって受ける不利益がなくなれば、これも社会進出を後押しするでしょう。
女性の社会進出が進めば社会的リターンが向上することに異論がないとしても、ではどれだけの効果があるかは判然としません。

家族的リターン

例えば、スーパーで1家族1個までの限定安売り商品を買う時に姓が違うので他人のフリができる、といったことはあるかもしれませんが、得にはなさそうです。

個人的リターン
業務上のリターン

今現在、仕事で通称での旧姓使用を続けている人は多く存在します。
姓を変更することは、個人にとって大きな損失となる可能性が高いということです。
逆に言えば、姓を変更がないことで過去の人間関係や仕事の業績を傷つけなくて済むことが個人として大きなリターンになるということです。

もちろん、人によっては特に過去の蓄積がないあるいはスイッチングコストがゼロであるという人もいるでしょう。
個人としてみたときには、リターンがある人とない人の両方がいると言えます。

感情的なリターン

好きな人と一緒の姓になることに幸せを感じる人がいるのと同じく、慣れ親しんだ自分の姓が変わることに不幸を感じる人がいます。
自分の姓を変えなくて済むことが、それらの人にとっては大きなリターンとなります。

まとめ

夫婦別姓の社会的コストとリターン

ある程度の試算はできそうですが、何とも言えません。

夫婦別姓の家族的、個人的コストとリターン

差し引きで得をする人もいれば、損をする人もいる、という当然といえば当然の結果となりました。
そもそも、間違いなく全員が得するか損するかはっきりしていれば政治的な問題になるわけがありません。

結論

社会的なコストとリターンが判然とず、家族的、個人的リターンは人によるわけですから、夫婦別姓を強制すべきとは言えないという結果となりました。

言い訳

ところで、夫婦別姓を強制すべきだという主張をしている人は見かけません。ですので、この記事は藁人形論法といわれればその通りです。

また、社会制度を経済的価値観のみでの損得で決めるべきではありません。

繰り返しになりますがこの記事では政治的主張を意図していませんし、特定の政治的主張への批判も意図していません。

ちょっとした実験として夫婦別姓のコストとリターンについて考えてみましたが、色々と整理ができて、少なくとも私自身は満足しています。

その他の選択肢

夫婦同姓にしろ別姓にしろ、強制すれば損をする人が出ます。そこで、選択制にすれば誰も損をしないじゃないか、ということになるわけですよね。でも、選択制にした場合のコストとリターンというのも当然あるでしょう。

また、結婚を機に夫婦で新姓を創出した方がリターンが大きいぞ、という家族、個人がいてもおかしくありません。

さらに無姓の強制・選択制が良い、そもそも氏名不要でマイナンバーへの一本化で良いという考え方もあるかもしれません。

また、改めて考えてみたいと思います。(記事として書くかどうかは分かりません)