Pay or Not

払うべきか、払わざるべきか。割に合うか、どうか。判断に迷う事や物のコストとリターンを計算します。

和食の魚介料理に合うお酒 - 何を買うべきか

以前の記事でお酒の価値について触れました。 

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アルコールに着目すると焼酎やウイスキーがお得であるとの内容でした。しかし、もちろんアルコールだけがお酒の価値ではなく全ての酒類をアルコールだけで比べられるものではありません。

お酒と料理の相性

例えば、ワインにはマリアージュ(相性)という考え方がって大雑把には、肉料理には赤ワイン、魚介料理には白ワインというような目安があります。

同様に、和食の魚介料理と日本酒はとても合います。ところがこれをワインにすると生臭くなってしまい全く合いません。
白ワインは和食の魚介料理には会いませんが、欧州の魚介料理とは合います。欧州の魚介料理は、バターやオリーブオイルが使われておりこれらが生臭さを消す役割をしているとのこと。

魚介料理を生臭く感じる原因

3つの説があります。

アルカリ性

鮮度の低い魚介に含まれるトリメチルアミンなどの揮発性アミン類がアルカリ性の状態で生臭い匂いを感じるという説です。
中性、酸性の状態であれば大丈夫です。お酒は種類により強弱はあるものの一般的に酸性です。
なお、こんにゃくはトリメチルアミンを含みアルカリ性です。

メルシャンの研究によりワインと魚介の組み合わせで発生する生臭さの原因は鉄であるとの報告がなされました。
魚介に含まれる脂の酸化を鉄が促進することで匂いが発生するというメカニズムとのこと。
ただ、これでは鉄分を含まないビールと魚介の組み合わせでも発生する生臭さが説明できません。

亜硫酸

一方、酒類総合研究所の研究では亜硫酸が脂の酸化を促進することで匂いが発生するメカニズムを示しています。
こちらの研究では鉄の影響は大きくなさそうです。
なお、ワインには酸化防止剤として亜硫酸塩が添加されています。また下面発酵のビールも醸造過程で発生する亜硫酸を含んでいます。

亜硫酸悪玉説が有力

以上、3つの説をご紹介しましたが、お酒との組み合わせに限れば「亜硫酸」が悪さをしているようです。
お酒は基本的に酸性ですし、鉄分を含まず亜硫酸を含むビールと魚介の組み合わせでも生臭さが発生することからそう考えられます。

それでは、以上の話を踏まえて酒類と魚介の組み合わせについて個別に見ていきます。

ワイン

亜硫酸、鉄の両方を含み、和食魚介料理とは最悪の組み合わせと言えます。
ただし、白ワインと魚介料理一般の相性は良いようです。

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ビール

下面発酵のビールは鉄は含まないものの亜硫酸を含み、どうしても生臭くなります。また一般に苦味の強いビールは肉料理やソーセージには合いますが、魚介料理との相性は良いものではありません。

下面発酵のビールをラガー、上面発酵のビールをエールと呼びます。下面発酵では亜硫酸が発生しますが上面発酵ではほとんど発生しないようです。
ではエールと名のつくビールは生臭くならないのかというとそうとも言い切れません。
エール製造時に亜硫酸を添加する製法もあるようです。

日本の大手のビールはほとんどがラガーですので大抵は生臭くなると考えた方が無難でしょう。

日本酒

鉄、亜硫酸は含みません。生臭くなることはほぼないと思います。
また、日本酒自体の味の傾向としては白ワイン同様に魚介料理一般との相性も良い。
さらに日本酒には様々なアミノ酸が含まれており、それらが魚介の臭みを抑えて味に深みを与えるとも言われます。
和食の魚介料理には最高の組み合わせと言えるでしょう。

蒸留酒

ウイスキー、焼酎などの蒸留酒も一般に鉄、亜硫酸を含みません。(鉄の容器で保存熟成する場合などは除きます)

柑橘系や緑茶などが魚臭さを抑える効果が知られていますのでレモンや緑茶で作るサワー、ハイボールであればさらに効果がありそうです。

ラムベースにライム、ミントを使うモヒートなんかも良さそうですがさすがに和食には合わないかもしれません。

その他のお酒

世界には無数にお酒がありますが結局は鉄、何より亜硫酸が含まれているかどうかです。
果実酒はワインに限らずシードルなど亜硫酸が添加されていることが多いです。
ただし梅酒は梅を醸造したものではなく漬け込んだものですので含んでいません。食前酒のイメージが強い梅酒ですが最近は炭酸割りや食中酒として提案されていますので試してみても良いかもしれません。

現状の課題と今後

実際には、ボトルのラベルを見ても鉄と亜硫酸が含まれているかどうかは分かりません。
現状では消費者は間違った組み合わせで生臭さを味わわされます。そしてそのお酒が不味いとの心のラベルを貼ってしまえばメーカーにとっても残念です。
例えばワインは刺身に合わないと言ってしまえば一瞬、メーカーにとっては都合に悪いようにも思えます。しかし消費者とメーカーが事実を正確に知っている方が社会全体で、長い目で見ると良い方向に向かうように思います。
研究も様々行われていますし、いずれは明記されるようになっていくかもしれません。

まとめ

この記事では、

  • 和食の魚介料理に合うお酒は日本酒
  • 安く合わせるなら蒸留酒に柑橘系や緑茶を合わせる

のが良いと結論付けます。

「肉料理には赤ワイン、魚介料理には白ワイン」というのは欧州の食文化の中だけで成立する大まかな目安であって絶対的な真実というわけではありません。
「和食の魚介料理には日本酒(または梅酒、焼酎)」と覚えましょう。

おまけ

お酒を飲まない人は?

もちろん普通の水で良いのですが柑橘系を絞ればなお良いでしょう。

緑茶も良いです。お寿司には特にピッタリです。酢飯にお茶の苦味渋味が合います。

日本酒は肉料理には合わないのか?

不味くすることはないですが美味さを引き立てることもなく「合わない」と言えます。

どうしてもという場合は、純米酒(米だけの酒)が良いと思います。
純米酒には苦いアミノ酸が多く甘いアミノ酸が少ないのです。
吟醸酒純米吟醸)は、苦いアミノ酸が少なく甘いアミノ酸が多いです。そもそも吟醸酒は食中酒向きではありませんし。

やはり素直にワインかビールがオススメです。