Pay or Not

払うべきか、払わざるべきか。割に合うか、どうか。判断に迷う事や物のコストとリターンを計算します。

マザーズ上場 株式会社はてな - 買うべきか

株式会社はてな東京証券取引所マザーズ市場への新規上場が承認されました。

hatenacorp.jp

 

すでに抽選申し込みが開始されている状況です。

本記事では、はてなIPOについて買うべきかどうかを考えてみます。

用語と前提

この記事ではなるべく専門用語を使わないようにしますが、どうしても必要な用語もあります。必要な用語について説明をします。

IPOとは

まず、IPOについてエイチ・エス証券のサイトから説明を引用します。

www.hs-sec.co.jp

未上場企業が証券市場に株式を上場することをいいます。新規公開株には公募と売出しの2つがあります。(Initial Public Offeringの略称)上場することにより、企業は直接金融市場から広く資金調達することが可能となり、一般投資家は株式を市場で売買することが可能となります。

公募価格と初値

IPOが上場され市場で初めてつく値のことを初値と言います。初値は公募価格を上回る可能性が高く、ほとんどの場合は投資期待値がプラスになります。もちろんまれにマイナスになる「公募割れ」も発生するため全くの無リスクではありません。

多くの投資家がこの事実を知っているため、申込の希望に対して提供される株数が不足する問題が発生します。この問題を解消するために多くの証券会社が抽選により希望者に割り当てます。抽選に当たると公募価格で購入できます。

IPOのリターン

売り出し価格と初値は公開されているため誰でも調べることができます。
抽選倍率はエイチ・エス証券意外で公開されていました。(もし他にもあったら教えてください)

www.hs-sec.co.jp

ここでは、IPOの公募価格で買って初値で売るケースを考えます。

この場合、公募価格と初値の差額がIPO投資の初値売りでの利益となります。なお売買は100株単位となります。(例外もありますが、この記事の場合は全て100株単位)
IPO利益を当選倍率で割って期待値が求められます。

上場日銘柄名市場公募価格(円)初値(円)騰落率初値売り利益(円)当選倍率期待値(円)
2015/12/18 アートグリーン 名証セントレックス 420 614 46.19% 19,400 31 618
2015/12/17 オープンドア 東証マザーズ 3,820 4,710 23.29% 89,000 484 184
2015/12/15 ダブルスタンダード 東証マザーズ 2,190 5,010 128.76% 282,000 500 564
2015/11/4 日本郵政 東証 1,400 1,631 16.50% 23,100 11 2,137
2015/11/4 かんぽ生命保険 東証 1,450 1,680 15.86% 23,000 53 432
2015/11/4 ゆうちょ銀行 東証 2,200 2,929 33.13% 72,900 12 6,040
2015/9/2 ベステラ 東証マザーズ 2,500 3,125 25.00% 62,500 1,063 59
2015/8/5 エスケーホーム 福証Q-Board 800 910 13.75% 11,000 635 17

 

アートグリーンと郵政3社の当選倍率が極端に低いです。
郵政3社は史上最大級の案件であり例外中の例外と考えてください。(記載しない方が良いかもしれませんが、参考のため記載することにしました)
アートグリーンはエイチ・エス証券が主幹事(当該IPOについて請負っている証券会社)であるため割当数が多いと予想されます。
この中ではてなに一番近いのはダブルスタンダードかオープンドアあたりでしょうか。

これらを参考にはてなIPOについて想定します。

はてな初値売りでの想定リターン

はてなの公募価格を800円と想定します。
また、すでに出回っている初値予想を見ると、だいたい150%から300%の間に収まるようです。

なお、エイチ・エス証券は、はてなIPOの取り扱いはありません。そこで、その他の証券会社でも同じようなものと想定します。はてなの主幹事はSMBC日興証券です。
当選倍率は30倍、500倍、1,000倍のケースで考えます。

上場日銘柄名市場公募価格(円)初値(円)騰落率初値売り利益(円)当選倍率期待値(円)
2016/2/24 はてな 東証マザーズ 800 1,200 150% 40,000 1,000 40
2016/2/24 はてな 東証マザーズ 800 1,600 200% 80,000 1,000 80
2016/2/24 はてな 東証マザーズ 800 2,400 300% 160,000 1,000 160
2016/2/24 はてな 東証マザーズ 800 1,200 150% 40,000 500 80
2016/2/24 はてな 東証マザーズ 800 1,600 200% 80,000 500 160
2016/2/24 はてな 東証マザーズ 800 2,400 300% 160,000 500 320
2016/2/24 はてな 東証マザーズ 800 1,200 150% 40,000 30 1,333
2016/2/24 はてな 東証マザーズ 800 1,600 200% 80,000 30 2,667
2016/2/24 はてな 東証マザーズ 800 2,400 300% 160,000 30 5,333

 

期待値のベストケースで5,000円超、ワーストケースで数十円(もちろんマイナスもありえます)。

他社(郵政除く)の例から見ると、あまり楽観的に考えない方が良さそうです。主幹事のSMBC日興証券から申し込んでせいぜい1,000円程度というところでしょうか。

IPO参加のコスト

まず、証券会社に口座を開く必要があります。
ネットで申し込むとしても開設に1時間はかかるでしょう。

次に売買コストです。IPOは通常買いの手数料は0円です。
売りの手数料は数百円必要です。
もちろん抽選に当たった場合に限りますので気にするほどの金額ではありません。

IPO参加のコストとリターンまとめ

投資のリターンとコストを考えると、わざわざ口座開設してまで購入応募するほどのものではないと考えます。
すでに証券口座を持っている人であれば応募してみると良さそうです。
もちろん、マイナスになる可能性もありますのでご自身でよく考えてから決めるべきです。

「初値買い」するべきか

次に、応募に外れたなどの理由で初値で買うというのはどうでしょうか。

先ほどのダブルスタンダードとオープンドアの初値と現在の株価(2/6の終値)を以下に示します。同様に昨年2月に上場したシリコンスタジオとALBERTについても記載します。(全てマザーズのIT企業)

上場日銘柄名公募価格(円)初値(円)2016/2/6 終値(円)
2015/12/17 オープンドア 3,820 4,710 5,020
2015/12/15 ダブルスタンダード 2,190 5,010 2,389
2015/2/23 シリコンスタジオ 4,900 9,900 2,460
2015/2/19 ALBERT 2,800 6,040 1,651

 

また、PwCあらた監査法人が2014年IPOの1年後の値動きについてまとめたデータを見てみます。

www.pwc.com

もちろん個別の企業により状況は異なりますが、IT企業の平均的としては初値で公募価格から大きく上げてその1年後には大きく下げるが公募価格はやや上回るというような傾向がありそうです。シリコンスタジオとALBERTもこのパターンでさらに現在は公募価格を下回っている状況です。

初値で買うのはやめた方が良さそうです。

どうしても買いたい場合は公募価格付近に下がるまで待ってからの方が安全です。もちろん、そこからさらに下がることも覚悟する必要があります。

まとめ

この記事としては、はてなIPOについては、証券口座を持っていない人がわざわざ開設してまで買うほどのものではないという結論とさせて頂きます。