好きを仕事に - するべきか
近年、「好きを仕事に」というキーワードを目にする機会が増えました。
本記事では、好きを仕事にするべきかどうかについて考えてみます。
前提
本ブログでは、これまで働き方や趣味について幾つかの記事を書いてきました。
これらの記事の内容を振り返ります。
仕事と収入
海外留学で向上する年収平均は以下の通りです。
- 男性: 平均575万円から70万円アップ
- 女性: 平均330万円から109万円アップ
同様に一般社員から課長に出世することで向上する年収は以下の通りです。
- 男性: 平均477万円から359万円アップ
- 女性: 平均379万円から333万円アップ
母集団が違うため「海外留学」と「出世」の平均が違いますがおおよその傾向はつかめるかと思います。
「好き」と消費金額
オタク趣味の年間消費金額の代表的な値はそれぞれ以下の通りです。
ここで示される消費金額で十分に「好き」を満たせているものと仮定します。すると、飛び抜けて高い金額であるアイドル趣味で考えてもせいぜい年に7.4万円消費することで「好き」は満たせるということになります。
「好きを仕事に」するために収入を犠牲にする場合、せいぜい7.4万円ダウンまでということになります。中央値にあたるアニメ趣味では、「好き」を満たすには2.5万円ダウンまでです。
好きを仕事にした場合の収入
日本アニメーター・演出協会が実施した「アニメーション制作者実態調査報告書2015」が昨年公開されました。2013年対象の調査です。
比較のため内閣府世論調査の値も示します。
- 部長級: 1,029万円
- 課長級: 824万円
- 係長級: 607万円
- 職長級: 550万円
- 非役職: 442万円
比較するのは難しいですが、アニメの監督になるのは一般企業の部長級になるよりも難しい印象です。無理矢理に比較すると大雑把にアニメ職の収入は一般平均の2/3以下といったところでしょうか。
アニメ「好き」は年に2.5万円で満たせると考えると、好きを仕事にというのは到底割に合わないと言えます。
みんなが「好き」な職業は収入が低い
アニメと収入
アニメ職の収入が低いのは、価値が低いからなのでしょうか。アニメを趣味にしている人がいるくらいですし絶対的な価値が低いということでは当然ありません。
価格は価値ではなく需要と供給の関係で決まります。アニメ職においては必要とされる働き手の数に対して、希望する働き手が多い状態と考えられます。
つまり求人倍率が低いということであり買い手市場となります。その結果として収入が低くなる。
その他の趣味についても似たような傾向でしょう。趣味として好まれる分野の職においては収入が低い傾向でしょう。
収入が高い傾向にある職業とは
では逆に求人倍率が高い業種はどうでしょうか。
現時点ではIT・通信業の求人倍率がダントツで高く、倍率2.5を超えています。比較的新しい分野で需要が増しているのに供給が追いついていない状況と考えられます。つまり売り手市場となり収入は高くなります。
好き嫌い、向き不向き、得意不得意を考慮しなければ、現段階ではIT・通信業でお金を稼ぎ、そのお金を趣味に回すのが最も効率が良いということになります。実際には求人倍率と自分の得意分野とのバランスで効率が決まるでしょう。
まとめ
最適なキャリア戦略
過去の記事と今回の記事を総合すると、
まず、求人倍率の高い業種の中で自分のスキルが活かせる会社でお金を稼ぐのが良いでしょう。
男性は、人脈と能力を向上させながら出世を目指し、海外赴任のチャンスを狙うべきです。
女性は、人脈を広げて外資系など女性を過小評価しない職場を目指すべきです。海外赴任を目指すべきですが、状況が許せば若いうちに留学をするのも効果的です。
そして男女ともに稼いだお金を趣味に回して人生を楽しみながら、できれば趣味を人脈拡大や能力向上に結び付けらればなお良いでしょう。
より「仕事」と「好き」を両立するために
幸いにも日本ではオタク趣味を始め、様々な趣味や楽しみを見つけることが容易です。
また会社での影響力を増して、自分の仕事を趣味に寄せていくということが考えられます。仕事で培った自分のスキルと趣味の知見を合わせてビジネスチャンスに変えていくわけです。これは大変に難しいですがやりがいがあるのではないでしょうか。
新興国(とりわけアジア)の人でオタク趣味の人は、留学して日本のIT・通信を始めグローバル人材を求める会社に就職してお金を稼ぎ、日本でオタク趣味を存分に楽しむという戦略が考えられます。実際にそのような人は増えています。
繰り返しになりますがこの記事では「好きを仕事にすべきでない」という結論です。
だからと言って諦める必要はありません。最も効率の良いキャリア計画によって仕事を好きに寄せていくことは不可能ではありませんし実はその方が持続可能性が高いのではないか、ということを今回の記事で提案したいと思います。
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